抜毛症

お風呂上がりにドライヤーをして、髪を梳かしたとき、頭頂部がちらちら光った。またか、と思った。

 

抜毛症。始まりを覚えていないが、高校生のときから、頭頂部の髪の毛を抜いている。気づけば手が頭頂部にあって、人差し指と親指で髪を一本ずつ挟んで、すーっと撫でるように滑らす。手触りの良くないガタガタした髪の毛をぷつっと抜いてしまう。痛みは全く感じず、むしろ快感を感じる。抜いたその瞬間だけ、解放されたような気持ちになる。でもすぐに自分がしたことの気持ち悪さと、意志の弱さに腹が立つ。抜毛症は、癖ではなく精神疾患のひとつらしいということを、就職してから知った。

 

ふつうの人はこんなことしない。

 

わたしは症状が軽い方で、頭頂部に何もないというわけではなく、ちょっと薄いかな? というくらいなのだが、高校生からかれこれ8年間この状態が続いている。抜いてしまっては後悔して、また抜いてしまう。新卒一年目のプログラミング研修のときはわけがわからなさすぎて頻繁に抜いていた。在宅勤務だと歯止めが効かない。

 

手遅れになる前に早く治したい。

精神疾患なので、その原因の除去が完治には欠かせないだろう。わたしの原因は仕事で、原因の除去なんて簡単にできやしない。となるとやはり、必要なのは「治す!もう絶対に抜かない!」という強い意志なのだろう。意志なんかどこにもない。ところてんみたいにぷるぷるよわよわなわたしの意志。今年中には治したいなと思いつつ、また人差し指が髪を撫でている。