傘を持つ

電車に乗ってくる人たちが皆、傘を持っていたので、外はもう降り出しているのだろうと思った。こっちの天気は確認していなかったので、折りたたみの傘も持ってくるのを忘れた。東京に着くまでに止むことを願う。

ネオンの妖しいひかりがそこかしこで揺れている。いよいよ東京である。都会である。

都会に住む人は何もかもが違っているように思う。こげ茶に染めた髪をゆるく七対三にわけている。ノリのきいたシャツは白く綺麗で、濃紺のスラックスのおかげで映える。磨かれた革靴は蛍光灯を受けててかてかと光っている。ちらと覗く靴下は黒色で何の違和感もないが、これが少し派手な色でも、きっと様になるだろう。

 

東京、眠らない街。オフィスも、飲食街も、こうこうと光っており、人々の行き交いは絶え間ない。大きな広告たち、知らない光、人、音、色。