落陽

寒くなったなと思う。電車から降りて、息をついたら白かった。四コマ終わりにまっすぐ家に帰っても、陽は落ちて夜の空気になっている。

電車に間に合わないからあきらめようとしたかれど、なおちゃんは「走れば絶対間に合うよ」と言い切るや否や駅のほうへ駆けていった。なおちゃんは中学も高校も陸上部だったから、川を泳ぐ魚みたいにすいすい前に進んでいく。置いていかれないように追いかけたけれど、走れば走るほど、なおちゃんの背中は小さくなっていく。それでもなんとか電車に飛び乗ると、一足先に到着していたなおちゃんが「ね、間に合ったでしょ」と笑った。ずいぶん久しぶりにこんなに全力で走った。息は上がるし、冷えた空気が出入りした鼻も痛いし、視界まで滲むし、いいことなんてひとつもないはずなのに、楽しかったから、私もなおちゃんに笑いかけた。ひどい顔だと笑われた私は、走るのが下手だ。

 

この前、走って帰ったら楽しかった。小学生の登下校みたいに、あー、自由なんだなあって思った。中学は制服が息苦しくて、高校は部活にずっと明け暮れていたから、久しぶりの、無垢な自由が愛しかった。

最近、お風呂上りに簡単なエクササイズを始めた。ベビーオイルでのマッサージと、開脚とかのストレッチと、腹筋と、もろもろ。ずっとロングスカートをはいているけれど、スカートのすそからのぞく脚がほっそりしていたら、私がうれしいなあと思って、毎日少しずつ負荷を強くしている。やせて垢抜けたい。都会の少年みたいなひとにあこがれている。