こわくて

 朝、雨が降っていた。

 さめきらない頭でも、外が朝を迎えていることはわかっていたけれど、同時に夢を見ていたから起き上がることはしなかった。夢の内容はもう、覚えていないけれど、なんだか懐かしい人と会っていたような気がする。

 自然と目を開けて、充電し忘れたスマホの電源をつけると、時間は2限開始まで30分もないくらいの時間だった。適当に化粧をして、アイロンで前髪を巻いて、リネンのワンピースを着て、家を出た。横にポケットがついている服は便利だから好きだ。家の鍵をつっこんだ。

 雨の日も、晴れの日も、くもりの日も、特に好きとか、嫌いとかはない。日によって雨が嬉しい日もあるし、晴れなら気持ち良いと感じるけれど、こちらはどうあがいても受けいれるしかないのでそれに身を委ねるしかない。

 買ったばかりの傘を大学で盗られた。店先の傘立てに突っ込んでおいたら、ものの五分で、煙のようになくなってしまったのである。実家に帰った時お母さんに買ってもらった傘。1ヶ月くらい経つけれど、傘立てを見るとついその傘がないか探してしまう。かえってこないことはなんとなく、わかっている。